5days Art Challenge, the 5th day

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【5日目】
先月、工業デザイナーの榮久庵 憲司さんがお亡くなりになりました。メディアはそろって「あのキッコーマンしょうゆ卓上びんをデザインした人」と紹介していました。幾百ものすばらしいデザインを生み出してきた中で、多くの人に愛され親しまれたものが代表作になるのだなぁと思いました。

・・・という観点で私の「代表作」を3点選んでみました。技術もデザインも未熟な私ですが、この3点は日本においてソープカービングのスタンダードになっている作品だと自負しています。

<左の写真>
私が「初級のダリア」と呼んでいる花。

タイでは、ソープカービングはフルーツカービングのおまけです。私が赴任中に学んだときはソープカービングから習えるカリキュラムはありませんでした。フルーツで中級程度の技術を身につけた後、石けんでも彫ってみましょうというコンセプトです。初めて石けんを彫ったのはフルーツのカリキュラムを30回終えた後で、ドークバーンチューンの花でした。

でも、自分の教室ではソープカービングだけ学べるカリキュラムを作りたかった。
当時バンコクの教室の初回のカリキュラムは「にんじんの稲穂模様」もしくは「きゅうりの葉っぱとトマトのバラ」でした。そこで、万が一他の教室と同じデザインになってコピーライトを争うようなことにならないよう、自分のオリジナルだと主張できるよう、どちらでもないタイの「ダリアの花」のデザインをうんと簡単にしたこのデザインを考案しました。

初回から丸い花心は難しいとアドバイスいただいたこともありますが、本来「習い事」ではなく「職人技術」であるカービングは難しく、厳しいものです。スタートを簡単にしたところで途中でつまづくのは目に見えています。それよりは、難しいものだと理解したうえで、習うのかやめるのか決めていただくいたほうが良いと思いました。

「ソープカービングコース」などというものを勝手に作ってしまったので、他の先生がたから非難される覚悟でいました。「それはタイのカービングではない」と言われたら、カービングの名を捨てて「ソープクラフト」と名乗ろうと思っていました。

ところが、他の先生がたも後にならってくださって、いつのまにか日本ではソープカービングのほうが主流になってしまいました。フルーツカービングは材料の調達が難しく、料理教室と同等の設備が必要で、日本のカルチャーセンターの事情を考えると当然のなりゆきだったのかな、と思います。

皆がこの花を「初級のダリア」と呼んで、第1回目のカリキュラムにしていました。デジタルカメラとインターネットの出現で、情報が画像とともに簡単に流れる時代になっていたのでした。

コピーライトを主張するほどの作品でもないので、いっそのこと日本のスタンダードにしてしまおうと思って、本を出したときに放出しました。

ちなみに、石けんのもとの形を損なわず、表面に模様を彫り込むことを「レリーフ彫り」と名付けたのも私です。会ったこともない人が「レリーフ彫りのバラです」などとネットに作品をアップしているのを見て、ああ、この人は本場タイでも「レリーフ彫り」と呼ばれていると勘違いしていないといいな、とひやひやしたものです。

この機会に注意を促しておきます。タイで「レリーフ彫りの初級のダリア」などと言っても通じません。

<中央の作品>
これも多くのかたにご愛顧いただいている「クリスマスツリー」。

仏教国タイの伝統手工芸であるフルーツカービングにクリスマスツリーはありませんでした。イベント好きの日本の習い事事情にあわせて、確か2000年の冬に作りました。可愛くて、誰でも作れそうな雰囲気で、実際に誰もが作れて、作っているときが楽しい自慢のカリキュラムです。

あえて本に載せなかったのは、自分のものとして大切にしておきたかったからなのですが、全国津々浦々の教室で作られているようです。本に掲載しておけばよかったと後悔しています(笑)。

<右の作品>
私が「レース」と呼んでいるパーツ。2003年以前の作品画像を保管したフォルダの中に入ってました。

フルーツカービングでは、刃をゆらしながら彫るこのパーツは先端がとがった三角形が並び、石けんで学んだときにも、先生のお手本はぎざぎざしていました。私はそれができずに先端が丸くなってしまいました。

でも、それがかえって可愛らしく、ようじで穴をあけて、よりレースの雰囲気を出したものです
これも「ようじで穴をあけるなんてけしからん」と批判されるのではないかとびくびくしながら発表しました。

一昨年、バンコクのボイスでソープカービングの講座を受講したときに、私のことをご存じない先生が、ようじを取り出してこの技術を私に教えてくださいました(笑)。



どんな小さなものも、最初に作った人がいます。
どんなささいなものも、生み出すにはエネルギーを必要とします。

私たちはそのことを忘れずに、お互いの作品に敬意を払っていきたいものですね。


2015-03-04 : ソープ・カービング :
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プロフィール

モリタミホ

Author:モリタミホ
フルーツ&ソープ・カービング教室ブルーを開いています。

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